部下を優秀な人材にする教え方講座

部下が優秀だったら・・・そう考えない管理職はおそらくいないでしょう。でも、優秀にする方法がわからない・・・それは、「教え方」を知らないからです。「教え方」は学校では学びません。学んだ方は教育学部でほとんどが学校の先生になります。だから一般企業では「教え方」を学んだ人はほとんどいないのです。さまざまな部下育成法が世の中に出回っているからこそ、オーソドックスだけど着実な手法をブログに書き綴ります。

研修設計の考え方

管理職の部下育成トレーナーの安部です。皆さん、部下を育成していますか?

 

部下を育成して、強い会社を創造しましょう!

 

本日は、「研修設計」の考え方についてお話します。

設計といえば建物を建築する際に使われるものを良く耳にされると思います。他に、製品設計もあります。良くCADで図面作成される分野では、「設計」してから製作にかかるというのが通常です。

 

私はもともとソフトウェア開発の企業に勤務していたので、「設計」というとソフトウェア設計がすぐに頭に浮かびます。

 

建築物や製品と異なり、ソフトウェアは直接目に見えるものではありません。だからこそ設計がとても重要視されてきました。

 

その設計を研修の中でも取り入れる必要がある、と考え始めたのは、10年くらい前からです。その頃知った言葉で「インストラクショナルデザイン(略してID)」があります。まさしく「教えることの設計」です。

 

私が衝撃を受けたのが、「カークパトリックの4段階評価モデル」でした。

 

カークパトリックの4段階評価モデル

アメリカの経営学者であるカークパトリック博士が1959年に提案した評価モデルです。

 

研修を受けた後、皆さんはどのように感じますか? 変化はありますか?

 

それまでの私は研修をしたとしても1回限りの研修を数時間受けただけでは何も変わらないと感じていました。研修を仕事としているのにです。だからこそ、人は研修に対して大きな期待を持たずにいるのです。

 

その当時、私の営業先でも「とりあえず研修をしなければ……」という感じで、研修を行うことが義務であり、その先の受講者の「変化」は期待していない、という感触でした。

 

これって、やるだけの意味はあるのかなぁ。

 

と、私のモチベーションが底をついた頃に出会った評価モデルです。

 

評価モデルは、レベルが4段階に分かれています。

 

  • レベル1:Reaction(反応)
  • レベル2:Learning(学習)
  • レベル3:Behavior(態度・行動)
  • レベル4:Result(結果)

 

研修を受けた後、何らかの事がらが心に残ります。「良かった」とか「満足」とかいった言葉で表現できるものです。

 

中には「不満足」といったものもあるでしょう(苦笑)。

 

それが、「レベル1の反応」です。

 

ここまでで研修が終わってしまえば、1年後には「なんか研修を受けたような気がする」というレベルになります(笑)。人間は忘却します。忘れなければ生きていけないといわれているので、研修を受けたことは覚えていても研修の内容は全く忘れてしまうのです。

 

社会人になってからは全く縁遠くなってしまったと思いますが、学生時代の一番憂鬱だった学期末テスト。このレベル2の段階にあるかどうかを試すためのモノです。「レベル2の学習」です。

 

研修を受けて、知識がちゃんと身についているかの受講後テストでレベル2であることを証明するのです。

 

そして、「レベル3の態度・行動」です。

 

研修を受けて、「なんか、あの人、変わったよね」と言われるようになったレベルです。このあたりから研修の効果が感じられるようになります。

 

最後の「レベル4の結果」は、研修を受けたことによって、業績がアップする、売上向上する、コストが削減される、残業時間が減る、といった効果が出てくることです。

 

研修を依頼される経営者の方は、レベル4を期待します。

 

でも、今までの研修では、せめていってもレベル2どまり。だからこそ、「研修に期待しない」という雰囲気が醸成されるのです。

 

私はレベル4を見て衝撃を受けたのです。私がそれまで漠然と考えていた「本当の意味での研修」がそこにあったからです。

 

人材育成を行う上での研修は、経営指標に深く関与すべきであり、それができる研修を行うことこそ「本当の意味での研修」である、と私は深く感じました。

 

研修設計での4段階評価モデル

研修を行うのであれば当然レベル4を目指すことが必要だと考えています。

 

ところが、このレベル4の結果、いろいろなサイトや書籍で非常に難しく記述されています。つまり、研修の結果として「ROI(投資利益率)」があがることなのです。

 

うーん、でかい。

 

衝撃を受けて、「これだ!」と思ったのもつかの間、ゴールが果てしなく遠く感じられたのです。

 

例えば。

 

研修を受けて3カ月後に売り上げがアップしたとします。

 

でも、それは、たまたま外的要因(経済情勢や何らかのイベントの実施など)があったため売り上げがアップしたとしたら、研修の効果はどれくらいだったのでしょうか?

 

明確にはわかりませんよね。

 

売り上げ金額を「レベル4:結果」にすると、こんなことが起こります。

 

あいまいな設計を行うと、このような結果が導き出され、「やっぱり研修は意味ないよね」ということになります。

 

ここで言う結果は「売上高」といったものではなく、もう少し本質的で数値化できるものを当てはめる必要があります。

 

例えば。

 

衣料販売店の店長が店員に対して何らかの研修を行うとします。店員のコミュニケーションが足りてない、とか、おもてなしができていない、というきっかけで研修を思いついたとしましょう。

 

ここで、研修を行う前に以下の数値をいくつかピックアップするのです。

 

  • 顧客満足度を数値化する(アンケートなどを利用)
  • 顧客単価(一回に顧客が購入する金額)
  • 顧客滞在時間
  • 顧客再来訪間隔(ポイントカードなどからデータを取得)

 

この中から店長は、自分の経営方針から数値を拾い出し、事前データと研修後に再調査したデータを比較するのです。

 

これが「レベル4の結果」ということなのです。

 

※学術的にはこれらの数値をレベル4にするのかレベル3+αにするのか、議論されているようですが、私は企業の現場はシンプルが良いと考えて、こうしました。

 

このように数値を目標とすると、おのずとゴールが見えてきます。研修完了後のゴールです。

 

このゴールが、「レベル3の態度・行動」です。

 

例えば、目標が「顧客満足度」であるならば、店員の態度や行動が変化しなければ達成しません。変化するようにするにはどうすれば良いのか、ということを考えるのです。

 

研修設計の3つのステップ

前項でお話した目標やゴールは、研修設計の3つのステップの最初のステップです。

 

研修を行う際、必ず目指す目標やゴールを設定する必要があります。これが抜けていると研修を行っても本当に効果があったのかがわかりません。費用対効果を考える時に、必ず必要なステップなのです。

 

また、目標やゴールがないと、どのような研修を行えば良いのかの判断もできません。

 

顧客満足度を上げたいと思って「マナー研修」を行ったとしても、顧客は元来その店の単価が高くて不満に思っていた・・・ということでは、研修の意味がないのです。

 

単価が高いのを不満に思わないような店員による「おもてなし」ができるようにならなければいけないのです。

 

その違いを把握しておく必要があります。

 

そして、次のステップ、現状を分析することです。

 

店員が3名いて、そのうち1名はベテラン店員であり、非常になじみの客が多い方がいるとします。他の店員がそのベテラン店員のようにさせたい、と店長は考えました。

 

そこで、ベテラン店員の行動パターンを分析する必要があります。

 

例えば、ベテラン店員の役職がついていたり、社歴が長かったりする場合、その店員を講師として、他の店員を指導させることができます。

 

他の店員とそう変わらない場合、一人だけ研修を受けさせないというのは不公平感などを募らせることになり、そのベテラン店員の退職につながる可能性もあるのです。

 

ベテラン店員の性格を踏まえることが、このステップでの重要課題です。

 

最後のステップが、研修そのものをどのような形式で行うか、ということを決めていくことです。

 

研修は以下の3種類があります。

  1. Off-JT
  2. OJT
  3. 自己研鑽

 

Off-JTとは、学校をイメージしていただけると良いです。

 

通常の職場とは異なる環境で、通常一緒に働くメンバーや他の部署で働くメンバー、時によっては他の会社のメンバーなどが一同に会して同じ内容を学習するという形式です。

 

この場合、講師が社内や社外から選択されて、話をします。

 

続いてのOJTは、通常の職場で上司や先輩が講師となって、実際の仕事をしながら教えていく形式です。

 

日本の普通の企業ではこの形式が一番多くなっています。昔ながらの徒弟制度もこの形式の変形です。そのために、馴染みがあるからだと思います。

 

最後の自己研鑽は、読んで字のごとく、自分で学ぶ、「自学」です。

 

実際、書店に行くと、「自己啓発」というコーナーがあり、そこには種々様々な本が並んでいます。通常は、本や専門サイトを読んで、学習する形式が多いです。その他にも通信教育を受ける、といった形式もあります。

 

最近の通信教育は、昔と違い、インターネットを使った動画配信などもあり、本の文字を拾いながら学習するより視覚効果があるものが増えています。また、郵送などの費用もかからないため、非常に安価で提供されているものもあります。

 

これら形式のどれを選択するのか、いつ、どこで実施するのか、などを考えるステップです。

 

ゴールを決め、現状を分析し、対策を実施する。

 

つまり、この3つのステップは、課題解決の手法を取り入れています。

 

ただ、人材育成は課題解決の手法だけでは難しい部分があります。それは、「人間」が相手であることです。

 

上司となり、部下の育成に携わったことがある方は、肌感覚で感じていらっしゃると思いますが、部下一人ひとり、個性があり、できること・できないことが異なり、感じ方・受け取り方も異なってきます。

 

課題解決のように単純ではない、というのが人材育成の難しさです。

 

そこで、研修設計という手法を取り入れて欲しいと考えているのです。

 

研修設計というと、CADによって描かれたパース図のようなイメージを持たれる方も多いと思います。人材育成の設計書は、それよりも医師が書くカルテのようなものだと思っていただいた方が良いと思います。

 

先ほど申し上げたように、一人ひとり、習得しなければならない知識・スキルが異なります。なので、一人ひとりの現状に合わせたカルテを作成するのです。

 

部下の多い方は、カルテを作成するだけでも大変でしょう。ですが、このカルテは大変な効果を発揮します。

 

一つ一つのカルテに、その方の目標・ゴール、現状を記述します。

 

ここで、目標・ゴールが大変高いものであれば、それを細分化した目標も記載します。そうしないと、当人のモチベーションが維持できません。

 

先ほどの例で話せば、ベテラン店員になるという目標を立てても、新入の店員にはハードルが高く、研修当初から「到底なれそうにない」と感じてしまいます。最初から諦めてしまうのです。

 

そこに「挑戦しろ」といくらけしかけても、白けるだけで、モチベーションが上がることはありません。

 

将来的にベテラン店員になるという目標を立てても、まずは気持ちのいい笑顔ができるようになる、といった本人が少し背伸びすれば届く目標を提案する必要があります。

 

これらをカルテで管理するのです。

 

複数人の部下がいる管理職であれば、こういったカルテがないと誰がどうだったのか、ということがわからなくなります。

 

また、カルテには記録が残されるので、変化が数カ月にわたって現れるような人材育成では大変役立ちます。「徐々に」変化する部下を毎日見ていては、はっきりとした変化を管理職が感じ取れません。

 

ですが、カルテに記載されていれば、はっきりと変化を感じ取ることができます。部下の成長を感じ取ることができるのです。

 

研修設計の考え方

研修設計を行うことは、管理職にとってとても重要な仕事だと私は考えています。ですが、「このブログについて」というエントリでお話させていただいたように、ほとんどの方が教え方をきちんと学ぶことなく社会人になっています。

 

そして、社会人になってから、人に教える=人材育成に否応なく携わることになるのです。

 

そして、教え方を知らなくても、コツさえつかめば教えられるようになる一番基礎の考え方が、この研修設計なのです。

 

まずは、部下一人ひとりのカルテを作成することから始めてください。

 

部下の目標・ゴールを設定する時は、ぜひ部下と一緒に考えてください。

 

それらの具体的なやり方は、本ブログでお話していく予定です。

 

ぜひ、皆様のより良い部下育成のために、本ブログを役立てていただければ、と考えております。

 

このブログの内容をコンパクトにまとめたメールセミナーも開催しております。7日間にわたって合計30,000字ものメールが毎日届きます。内容は部下育成の5つのコツです。

  • ブログの更新が待てない
  • 早くコツが知りたい

といった方は是非メールセミナーを受講ください。

 

セミナーですが無料となっております。

メールアドレスの登録だけで、受講可能です。

 

お申し込みはこちらをクリックしてください。メールアドレスの登録フォームが表示されます。

 

また、文章では、実際に話を聞いてみたいという方は、お伺いしてのセミナーも実施できます。

 

圧縮した3時間コースと充実の18時間コースがあります。

 

  • 図解を見ながら話を聞きたい
  • ワークをやって身につけたい

といった方は是非リアルセミナーを受講ください。

 

リアルセミナーの詳細はこちら。

リアルセミナーの問合せ・お申し込みはこちらです。

 

このブログは基本的に週1回の更新です。木曜日前後に更新します。

 

それでは今日はこの辺で。

www.ugrade-japan.com