部下を優秀な人材にする教え方講座

部下が優秀だったら・・・そう考えない管理職はおそらくいないでしょう。でも、優秀にする方法がわからない・・・それは、「教え方」を知らないからです。「教え方」は学校では学びません。学んだ方は教育学部でほとんどが学校の先生になります。だから一般企業では「教え方」を学んだ人はほとんどいないのです。さまざまな部下育成法が世の中に出回っているからこそ、オーソドックスだけど着実な手法をブログに書き綴ります。

部下育成の基本的な3つの考え方

管理職の部下育成トレーナーの安部です。皆さん、部下を育成していますか?

部下を育成して、強い会社を創造しましょう!

 

本日は、「部下育成の基本的な3つの考え方」についてお話します。

 

人材育成は、基本的にとても時間がかかるものです。ここは、最初から頭に入れておく必要があります。ただ、教え方のコツをつかめば、意外と早く育成できます。このコツについては、おいおいこのブログでご紹介していきます。

 

そのために、大事な考え方があります。

 

 

1.部下と信頼関係を築くこと

 

当たり前かもしれませんが、まずは信頼関係を築くことが大事です。

 

実は人には、話を聞く相手と聞かない相手がいます。

 

例えば。

 

「あの部長の話、長いだけで少しもわからないからなぁー」といった言葉を聞いたことがありませんか?

 

部長の話は本当にわかりにくいのかもしれませんが、それでもちゃんと日本語で話しているはずです。全くわからないはずはないのです。

 

こういった言葉を言う時、心の中で、「部長の話は聞く必要がない」と思っていることが多いのです。だから、わかる話であっても「わからない」ということです。

 

よく学校で、好きな先生の科目はできるけど、嫌いな先生の科目は苦手である、ということがありますが、これと同じです。

 

相手の話を聞くべきか、聞いてもムダなのか。これは聞き手側が判断します。

 

もちろん、会社でお給料をもらっているサラリーマンですから、聞いているフリはします。相づちを打ってはいますが、それはかなり適当です。でも、大人なのでフリが上手です。傍目には、「聞いている」と勘違いさせるほどです。

 

部下を育成しようと考えても、相手が聞く耳を持っていなければ、何を言ってもムダです。大人ですから、聞いているフリはしていますが、本当に理解まで、腑に落ちているのかまではわかりません。

 

部下が「あなたの話を聞きたい」と思えるようにする必要があるのです。それには、信頼関係が必要ということなのです。

 

育成するにもまずは信頼関係から築かないと、話すら聞いてもらえないのです。あなたがいくら良いことを言っても、部下の心には届かないのです。

 

2.最終的に到達して欲しいゴールを部下に明確に提示すること

 

続いては、ゴールを明確に提示することです。

 

これは何となくされている方も多いのではないかと思います。いつも部下に「ちゃんとできる人材になれ」とか「数字を理解してから行動しろ」と言っているから。

 

それでは、質問です。

 

「ちゃんとできる人材」とは具体的にどんな人材ですか?

「数字を理解してから行動する」とは、何の数字を理解し、具体的にどのような行動を指すのでしょうか?

 

つまり、ゴールを示してはいるものの、そのゴールが明確ではない、ということなのです。必要なのは「ゴールを明確に」提示すること。

 

あなたが思う優秀な部下とは、どんな部下ですか?

 

優秀な部下と思われる人材はどのようなことを考え、具体的にどのように行動するのでしょうか?

 

それをあなたの頭の中だけではなく、ちゃんと書き出していますか?

 

考えただけではイメージでしかありません。それを、紙に書き出す必要があります。もちろん、パソコンのワープロソフトに書き出しても構いません。要は客観的に誰でもが見える状態にすることです。

 

客観的に見える化するには3つの理由があります。

1)上司であるあなた自身が確認するため

2)部下にあなたの考えを伝えるため

3)今後、同じ仕事をする部下の更なる部下のため

 

1)上司であるあなた自身が確認するため

頭の中のイメージだけの場合、その時の考え方で微妙に変化します。例えば、他の部下が失敗した直後、「こんな失敗をしないように、○○もできるようにしたい」と追加のゴールが突然出現することがあります。

 

頭の中でも言葉になっているから、追加はない、と思っていらっしゃるかもしれません。ですが、その言葉も抽象度が高い言葉であれば、解釈の仕方で変化してしまうのです。

 

ゴールが変化してしまっては、部下は何を目指すべきか、全くわかりません。

 

2)部下にあなたの考えを伝えるため

部下にゴールを伝えるには、イメージではダメです。きちんと伝えるためには、言語化して見える化する必要があります。

 

部下にゴールなんて伝えなくても、上司が思っていれば良いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

でも、到達すべきゴールが見えないと、部下は、自らをどう成長させれば良いのか、何が足りないのか、具体的な策は全く思い浮かびません。

 

また、部下が良かれと思ってやったことも上司から「ダメ」「まだまだ成長しろ」と言われることが頻発すれば、モチベーションも下がってしまいます。

 

例えば。

サッカーのシュートの練習をしている選手がいます。何度も何度も試行錯誤して上達していきます。試合でもシュートを決めることができました。ですが、コーチが「まだまだだな」と言ったらどうでしょうか。

 

選手はゴールを決めたのに何が悪かったのかがさっぱりわかりません。具体的に示さなければ選手のモチベーションは下がります。

 

コーチは、シュートでの足の角度や体の動き、必要な筋肉などの具体的なところまで伝えることで、初めて選手は理想的なシュートを理解するのです。

 

そんな面倒な……と思われるかもしれません。

 

確かに昔は「俺の背中を見て覚えろ」と言われてきた方も多いでしょう。

 

でも、「俺の背中を見て覚えろ」と言われて通用してきた時代では今はないのです。

 

仕事内容が異なってきています。その時代と同じ仕事をしている方は少ないでしょう。最近は知識労働者(ナレッジワーカー)であることが求められています。マニュアルを見れば誰でもできる仕事は、今後コンピュータにとって代わられるでしょう。

 

例えば、パソコンに向かって作業をしている人の背中を見ても何もわかりません。パソコンで企画書を作れ、と言われても、企画書を作ったことがない方には、どんなことを書けば良いのかすらわからないでしょう。

 

伝統的な技術で、何かモノを作っているのであれば、今どんな作業をしており、真似して作ってみることができます。師匠が作った作品を手に触れてみることもできます。自分の作品と並べて比較することもできます。

 

企画書は並べて比較することはできません。印刷後の紙は触れることはできますが、何が良いのか、何が悪いのかは、すぐに判別できません。

 

また、長年の修行が必要です。

 

現在の職場では、長年の修行を求められたら部下は退職してしまいます。また、変化の多い現代社会では長年の修行が完成するまで待ってくれません。だからこそ、今の時代にあわせるためにも、ゴールを明確にして見える化する必要があるのです。

 

3)今後、同じ仕事をする部下の更なる部下のため

そして、明確になり見える化されたゴールは、次の部下へ引き継がれていることになります。一度作れば、あとは時代にあわせて修正されながら引き継がれていくのです。

 

一度作ってしまえば終わりではないのですが、やはり「ある」のと「ない」のとでは全く違います。

 

また、人材育成のゴールは、部下や仕事内容、下手をすると顧客によって変化します。どんどん修正しながら提示され続けていくものなのです。

 

3.頑張った部下を承認すること

部下育成の基本的な考え方の最後は、頑張った部下を「承認」することです。

 

私は、「ほめる」とは違うと考えています。ほめるには、うまくできたという概念が必要です。でも、結果的に失敗した場合も現実では多くあるでしょう。その際にはほめるが使えない場合があります。

 

だからこそ、「承認」なのです。

 

努力、つまり、プロセスを承認するのです。

 

そして、承認した後は、きちんと失敗した原因を明確にし、その対策を部下と一緒に話します。

 

部下だって、よほどの新人でない限り、失敗したことくらいわかっています。失敗したことを責め立てても辛いだけです。それよりも、もっと建設的に何が原因だったのか、早急な手当は何があるのか、といったことを話して行動した方が良いのです。

 

ここまでは部下の基本的な3つの考え方です。

 

そして、最後に知っておいて欲しいことが2つあります。

 

1つは、部下育成に限らず人材育成は、PDCAを回していくプロジェクトであることです。

 

「ゴールを明確にして提示する」はPDCAのPにあたります。そして、「部下を承認する」はCにあたるのです。そして、失敗した後の対策を考えるのがAなのです。

 

人材育成はPDCAで回していくことでうまく行くのです。

 

それは、同じゴールでも、Aという部下は難なくクリアしたのに、Bという部下は何か月経ってもクリアできない、ということが起こり得ます。だからこそ、Bのために改めて難易度を下げたゴールを設定しPDCAサイクルを回す必要があります。

 

実は部下ひとりひとり異なるPDCAを回す必要があるのです。

 

2つ目は、人材育成は課題解決であることです。ゴールを設定し、現状(部下の状態)を分析して、対策を講じる、という手法はまさしく課題解決です。

 

しかも、同じゴールであっても部下ひとりひとり異なる現状であるから、ひとりひとりの対策も異なってきます。

 

人材育成が難しい、と言われるのも、このあたりが原因です。

 

でも、人材育成、部下育成は行わなければなりません。

 

何度も言うようですが、部下育成を行わないと、上司であるあなたの仕事は減りません。業績も上がりません。会社の売上も上がらないので、給料も上がりません。部下育成は部下のためだけでなく、会社のためでもあり、あなた自身のためでもあるのです。

 

今日は、部下育成の基本的な3つの考え方というテーマでお話してきました。

それでは、今日はこの辺で。