部下との信頼関係の構築とは
管理職の部下育成トレーナーの安部です。皆さん、部下を育成していますか?
部下を育成して、強い会社を創造しましょう!
今日は、信頼関係の構築についてお話します。
「信頼関係」とはどうすれば築くことができるのでしょうか?
こんな質問を以前したことがあります。その際、明確な回答をもらえなかった記憶があります。
それから、ずっと「信頼関係を築くとはどういうことなのか」ということを考えていました。
部下育成のための信頼関係構築
信頼関係を築くには、まず自分から相手を信頼することだ、と良く書かれています。この相手を信頼することを具体的にどうやれば良いのでしょうか。「信頼しているぞ」という言葉だけで相手に伝わるのでしょうか。
似た言葉に「信用」があります。調べてみると「信用」は、保証された「信頼」ということらしいです。
例えば、保証人がいるから、保証できるだけの預金があるから、といったことで銀行からお金を借りることができます。これは「信用」。
「信頼」は物的保証がなくても信用できる状態。
契約書もなく、物的保証もなく、相手を信用することが「信頼」だと知った時、私自身できないような気がして、とても不安になったことがあります。
現実の職場で、「俺はお前を信頼している!」といった言葉が飛び交うことは、あまりあり得ません。こんな究極な言葉が出てくるのは、小説や映画の世界です。それ以外であれば、スポーツの世界でしょうか。
そう考えて、スポーツの選手とコーチのやり取りを注目してみることにしました。
直接、有名なアスリートの方々とは知り合う機会はありませんので、報道のインタビュー場面などを注目してみるくらいでしたが、それでも良く「信頼」という言葉が出てきていました。
「コーチが私を信頼して送り出してくれたから、○○できました」
「××の時、コーチの信頼に応えなきゃと感じて、頑張れました」
こんな言葉が出てきます。
選手は、コーチのどんな言動から信頼されていると感じたのでしょうか。
その時、思い出したのが、子どもの頃に学校の体育の先生から言われて「お前ならできる」という言葉でした。それまで他の生徒と笑いあっていたのに、私ができないで落ち込んでいるとマジメな表情で、私の目を見て先生は言いました。
その時の私の心は、何だかとても落ち着いたことを強烈に覚えています。
たぶん、何の根拠もない言葉だったのだと、今になれば思います。私にできることだとは到底思えなかったのです。でも、先生の真剣な表情が心の奥底に刻まれたのは事実です。
それから苦手だったことに一生懸命取り組みました。もちろん、選手どころか人並みにすらなりませんでしたが、やることに対して恐怖心や嫌悪感はなくなりました。
これが「信頼される」ということなのか。
私は、そう思いました。
これを上司と部下の関係にどうやって持ち込むのでしょうか。
「お前ならできる」と言ったとしても、部下が失敗して大損してしまったら、責任は上司に降りかかってきます。下手をすれば減給どころか懲戒免職になるかもしれません。
部下に安易に「お前ならできる」と言ってしまうと、こんなリスクが発生するかもしれないのです。職場は生活が懸かっていますから、気軽には言えないでしょう。
以前、ブログの「部下育成の基本的な3つの考え方」では、
部下育成のためにはまず信頼関係を築くことから始まる、と私はお話しました。
その信頼関係を築く方法はどうすれば良いのでしょうか。
信頼できる人の条件は
ここで、私が信頼を置く人の条件を考えてみました。おそらく他の方も大して変わらないのではないかと考えています。
- 裏切らない
- 言動一致
- 承認してくれる
最初に「裏切らない」こと。
頻繁に裏切るような行動を取る方を信頼することはできません。
続いて、「言動一致」です。
言っていることと行動が一致している、ということです。これは、具体的に次のようなことです。
日ごろから運動することが重要と言っている人が、何も体調が悪くないのに普段から歩かず車を多用し、階段を昇らず、運動を全くせずテレビばかり見ている生活を送っている。
やはり、言っていることと行うことが、完全とまでは言わなくても一致していることが必要です。
私も講師業として、いろいろ話すことが多いですが、話している内容は実行していることがほとんどです。やはり、そういった内容(きちんと実行している内容)をお話しした方が、受講者にも届きやすいです。
最後に「承認してくれる」ということ。
この人は私のことを認めてくれている、という思いがあるかどうかです。
通りすがりの方から認められることはまずありません。通りすがりの方は、私のことを「人間」として見てくれるとは思います。「ヒト科ヒト属」的な見方ですね。
ですが、「一人のひと」「感情を持ち、それなりの歴史を持ち、家族・友人、さまざまな関係者の中で生きている人」としては見てくれることはないです。
だからこそ、通りすがりの方をいきなり信頼することはできないのです。
部下と信頼関係を構築するには
私は、自分が信頼する人の条件について考えてみました。その条件を相手との信頼関係を築くために利用するのです。
今、上げた3つの条件を、部下から見た自分に当てはまるようにするわけです。
まず、部下を裏切らないこと。続いて、部下に言うことは自分も行うこと。そして、部下を「一人の生きているひと」として認めること。
部下を信頼する、ということは、こういうことだと思います。
特に最後の「認める」ということは重要だと考えています。
上司がどんなに部下を信頼していると心の中で思っていたとしても、それが部下に伝わっていなければ、部下は信頼されているとは思えません。「認める」には、部下へ上司の想いを伝える役割があります。
そして、信頼関係を構築するのに欠かせないベースとなるものがあります。
それは、お互いが良く知っている関係性がベースになるということです。
全く見ず知らずの方を信頼するには、かなりの勇気が必要です。
よく知っている相手であれば、行動のクセなども把握できるので、より信頼関係を築きやすいのです。
ですが、上司と部下の間が良く知っている関係性ができているかどうか。ここが重要だと考えています。
例えば。
身近にいる部下と少し離れた場所にいる部下。
空間の距離が遠ければ遠いほど、信頼関係を構築することが難しくなることは経験上感じていらっしゃるはずです。だからこそ、遠い部下には上司から会いに行くことが重要だと思っています。
接触頻度が高ければ高いほど、信頼関係が築きやすいのです。
接触頻度を高めて、お互いに良く知っている関係性ができて、そこで部下は上司が「裏切らない」「言動一致している」「自分(部下)を認めてくれている」と判断することができ、信頼してくれるのです。
何だか大変そうだなぁ、と思われる方もいらっしゃると思います。
私も、部下を知るためにコミュニケーションを取らなきゃ、と考え、いろいろ話をしたり聞いたりした覚えがあります。でも、仕事に直結した内容ではなく、どちらかというと世間話に近かったので、なかなか部下との距離を縮めることができませんでした。
世間話では意味がないのです。良く知っている関係性を作るためのコミュニケーションは仕事のことを深く話す、ということが重要なのです。
部下の仕事に対する考え方・捉え方を知ることで、信頼関係を構築する第一歩が踏み出すのです。
すばやく信頼関係を構築するには
一瞬で相手との信頼関係を構築できる方がいらっしゃいます。そのような方を観察すると、相手をまず信頼するのです。挨拶をして名刺交換し、少し話をすると、もう相手を信頼している様子なのです。
信頼されれば相手も信頼を返してくれます。
観察しながら、私は、昔豊臣秀吉が「人たらし」と言われていた手法がこれかなぁ、と思うことがあります。
全く見ず知らずの方をいきなり信頼するのはハードルが高いです。
ですが、いつも一緒に仕事をする部下であれば、同じ会社に勤めているという共通点があります。性格も何となく把握できています。部下だって下手をすれば懲戒処分されることも十分承知しているので、基本的には社会的ルールに従っています。
そうやって考えれば部下を信頼することはとてもハードルが低いことなのです。
体育会系の方々であれば、当然のことをお話しているかもしれません。でも、体育会系ではない私からすれば、なかなか「信頼関係の構築」というのはハードルが高いものだったのです。
それだけに、いろいろな方の言動を観察し、知識を得、考えてきました。
昔の体育の先生には申し訳ないのです。せっかく「信頼」ということを教えていただいたのでしょうけれど、理解できたのは30数年経ってからでした。ごめんなさい(笑)
今回は部下との信頼関係の構築をテーマにお話ししました。当たり前のことだったと思います。ただ、肌感覚で何となくわかってはいたものの、こうやって言語化することではっきりと理解ができることもあります。
部下を育成することも同様だと思います。実は、何となく……という感覚だけでやっていたことを言語化することも重要なのです。
※技術の中には言語化できないこともありますけれど。
それでは今日はこの辺で。