部下を優秀な人材にする教え方講座

部下が優秀だったら・・・そう考えない管理職はおそらくいないでしょう。でも、優秀にする方法がわからない・・・それは、「教え方」を知らないからです。「教え方」は学校では学びません。学んだ方は教育学部でほとんどが学校の先生になります。だから一般企業では「教え方」を学んだ人はほとんどいないのです。さまざまな部下育成法が世の中に出回っているからこそ、オーソドックスだけど着実な手法をブログに書き綴ります。

コツ1:できる部下とはどんな人材か

管理職の部下育成トレーナーの安部です。皆さん、部下を育成していますか?

部下を育成して、強い会社を創造しましょう!

 

本日から部下育成のための5つのポイント、ということで、

1つ目のポイントをお話しします。

 

ポイント1

スキルには種類がある。

現在の業務を完遂させるためのスキルを

明確にしておく必要がある

 

ぜひ、お読みいただき、ご自身の部署で役立てていただければ幸いです。

  

1.研修で良く言われる「できる人材にしてほしい」とは

 

「研修」を仕事にしてから20年近く経ちました。

 

研修のご依頼を受けることが商売なので、

本当にたくさんの研修を実施してきました。

 

必ず研修を実施する前に

 

どんな研修をしたいのか

結果(ゴール)は何か

そもそも研修をしようと考えた目的は何か

 

といったことをヒアリングします。

 

その際に

「できる人材にしてほしい」

と言われることがあります。

 

「どんな人材にしたいですか?」

とある社長にお聞きしたことがあります。

 

社長の答えがこうでした。

 

・若くて(性格が)明るく、会話ができる

・元気で健康

 

・素直で人の話を聞く

・言われたことをきちんと(最後まで)やる

 

・積極的に仕事に取り組む

・自分の意見は積極的に言う

・上司に物おじせずにモノが言える

 

ん? 素直で人の話を聞く人間が上司にモノが言えるでしょうか?

 

・自分で仕事の管理ができる

・与えられた仕事の効率化が図れる

 

・場の雰囲気を読んで、静かにできる

・不必要な場面では会話をしない

 

ん? 元気で明るい人は基本的にある程度ウルサイ場合が多いです。

 

・経営的視点を持っている

・利益確保を最優先として…

 

若い人で経営的視点を持っている人がどれだけいると考えているのでしょうか。

 

これ全部を持ち合わせている人は、きっと

「スーパーマン

と呼ばれています。

 

そして、通常、大企業に採用されており、一般の労働市場に出てくることはありません。

 

中途の転職希望者にもまれに現れることがあっても、地方の中小企業が採用できる確率はきっとかなり低いでしょう。

 

こんな人を探すヒマがあるならば今いる従業員を成長させた方が、確率はもっと上がります。

 

ところが、今の従業員に対して価値を見出せない経営者がたまにいます。

 

たまに……と思いたい(笑)

 

でも、人は成長します。よほどのことがない限り。

 

あいつは成長しないよなぁ……と思える人に心当たりがある方。

 

それは誤解です。

 

その方は成長しないのではなく本人も周りも「成長しない」と思い込んでいるにすぎません。

 

大事なことなのでもう一度言います。

f:id:ugrade:20180907100930j:plain

 

人は成長します。

 

そして、そう信じることから研修は始まります。

 

まず、このブログを読まれているあなたに問います。

 

あなたは部下にどんな人材が欲しいですか?

 

書き出してみてください。箇条書きで構いません。

 

そして、それを見直してみてください。

 

スーパーマンになっていないかを。

 

その中で、どうしても必要だと思われる項目が理想の部下像です。

 

2.職場で必要とされるスキルとは

 

一般的な職場で必要とされるスキルは、20世紀にハーバード大学のカッツ教授という人がまとめています。

 

1.テクニカルスキル

2.ヒューマンスキル

3.コンセプチュアルスキル

 

テクニカルスキルというのは、「技術」ですね。

 

その業務を行うにあたっての「知識」や「技術」にあたります。

 

例えば、製造業であれば金属を削る技術、設計する知識や技術です。

 

銀行業であれば、お札を数える技術、簿記や会計の知識といったことがあげられます。

 

他にも、どんな業種にもあてはまる、お客様に対応する際のマナー、電話での受け答え、基本的なパソコンの使い方、といったことがあります。

 

前の例は専門的知識・技術・技能であり、後の例は汎用的知識・技術・技能です。

 

私のような研修を生業とする者には、専門的知識・技術・技能の研修は、特定の分野に限られます。

 

それは自分が経験したことのある分野です。

 

当然ですよね。

 

経験したことがないことを教えるのは、机上論に過ぎない場合が多く、実際の技術になればなるほど、教えられるのは「同じ会社の上司や先輩」のみです。

 

ここは十分に踏まえていただきたいと思います。

 

だから、教える技術が必要になります。

 

2.のヒューマンスキルは研修専門業者が得意とする分野です。

 

このスキルは、コミュニケーションを中心としたスキル群です。

 

コミュニケーションといっても守備範囲がとても広いです。ですから、いくつか細かく分かれます。

 

人前で話すプレゼンテーション

会議を主導するファシリテーション

交渉のネゴシエーション

人の話を聞く傾聴やカウンセリング

感情的にならずに想いを伝えるアサーション

 

思いつくだけでもたくさん出てきます。

 

ヒューマンスキルは対人関係のスキル群なのです。

f:id:ugrade:20180907101512j:plain

 

私は個人的に、この中にリーダーシップも含まれると考えています。

 

リーダーシップはリーダーだけが持つスキルではありません。

 

リーダーシップを部下の立場の人間が持つとそれはフォロワーシップと呼ばれます。

 

目的のために周りの人たちと一緒に業務を遂行していく力をリーダーシップというのであれば、目的のためにリーダーや周りの人たちと協力しながら業務を遂行していくのがフォロワーシップです。

 

リーダーシップと何ら構造に違いはありません。

 

だからこそ、若い人であってもリーダーシップは身につける必要があるのです。

 

社内の幹部候補生になったからリーダーシップを学ばせるのは遅いのです。

 

最後の3.コンセプチュアルスキルです。

 

人事関係者でなければあまり聞きなれない言葉だと思います。

 

具体的には、ロジカルシンキングクリティカルシンキング、俯瞰してみる力、多面的な視野、などあらゆる事象の中から課題を見つける力であり、そのような課題は通常正解がないため、正解のない課題に論理的に向き合い、社内で納得できる解答を導き出す力であり、周囲に対して導き出した解答を明確なビジョンとして表現できる力です。

 

要は、ものすごい経営者が持っていそうなスキルということです。

 

こんなスキル、部下に必要?と思われるでしょう。

 

比較的若い段階で頭角を現す人材は子どもの頃からこのスキルが鍛えられているとも言われています。

 

でも、このスキルはある程度業務経験を持った人材でなければ、習得が難しいものでもあります。

 

カッツ教授もコンセプチュアルスキルはミドルからトップマネジメントレベルの方々が身につける方が良いとしております。

 

ただ、さまざまな課題が発生する会社の現場でもこのスキルを持つ人材がいれば、スムーズに業務が回っていくでしょう。

 

できれば、主任や係長クラスから徐々に関心を持ち身につけられるようトレーニングを開始していくと課長や部長となった時点ですぐに発揮できると考えています。

 

ピーターの法則という社会学の法則があります。

 

能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する

 

つまり、課長で優秀であっても部長レベルの能力がない人も部長までは出世することになるということ。

 

そのために、

「時間がたてば、あらゆる階層には無能者だけが占めることになる。そして、その組織の仕事は出世の余裕がある無能レベルに達していない人によって遂行される」

という内容の法則です。

 

結構シビアな内容です。

 

良く名選手は名監督になれないと言われます。

 

現場と管理職では使われるスキルが異なるからだと私は考えています。

 

課長クラスでの使われるスキルと部長クラスで使われるスキル。

 

コンセプチュアルスキルの度合いが大きく異なるのです。

 

それまでテクニカルスキルとヒューマンスキルで何とかなっていた課長も、部長となればコンセプチュアルスキルが必要となってきます。

 

コンセプチュアルスキルは管理だけではなく経営する力を伸ばしていくために必要なスキルです。

 

課長は自分の配下である課の業務がスムーズに回ることに注力します。

 

ですが、部長は、自分の部の業務が回ることだけではなく、部の業務の方向性や将来像、顧客の創造など非常に抽象的なことを考える必要が出てきます。

 

そんな抽象的な考えを課長以下に伝えるためには具体化できる力が必要になります。

 

コンセプチュアルスキルの度合いが大きく異なるのを納得いただけると思います。

 

当然ながらこのスキル、一朝一夕で身につくものではありません。

 

だからこそある程度の時間を置いたトレーニングが必要なのです。

 

また、どんな人材でも身につくスキルである、と考えられていますが、得意・不得意は

他のスキルよりもどうしても強く出がちです。

 

人によってはコンセプチュアルスキルがどうしても合わない方も出てきます。

 

そういった方々はテクニカルスキルを極めるようなキャリアの道を作る必要があります。

 

出世コースではないのですが、エキスパートのコースですね。

 

最近では、プロスポーツの選手でも年齢的に厳しいと感じられても現役を続けていく人がかなり増えてきました。

 

いわゆるエキスパートのキャリアです。

 

プロスポーツは「体力」というどうしても超えられない壁があると私は思っていますが、実際の会社の現場では「体力」はそこまで要求されないのである程度の年齢になっても現場で頑張ることは可能だと考えています。

 

ドラマで良く出てくる「いぶし銀の刑事さん」のようなタイプです。

f:id:ugrade:20180907101832j:plain

 

「経験」からくる「勘」は業務遂行のためにはとても重要なリソースです。

 

そして、私は3つのスキル群にあわせて「教える力」をあらゆる人に身につけて欲しいと考えています。

 

管理職にならずに技術部門のエキスパートになったとしても、その人がある年齢に達すれば、あるいは病気やケガで動けなくなってしまえば、企業の技術力が落ちてしまうからです。

 

「自分の技術を教える力」

 

このメールセミナーの根底に流れるテーマです。

 

自分が学ぶよりも人に教える方がとても難しいです。

 

ですが、「人に教えると、そのことについて深い理解が得られる」と良く言われます。

 

これ、何故だかわかりますか?

 

人に教えるためには知識や技能の体系化を行います。

 

この体系化の作業が学習を行う上でとても大切な要素なのです。

 

今、自分はどの地点で、今後どのような技術を学ぶことが必要なのか、ということが明確にわかります。

 

要は、知らないところを歩く時の地図のようなものです。

 

地図があれば、(よほど地図が読めない人でもカーナビがあれば)目的地にたどり着けます。

 

これが知識や技能の体系化なのです。

 

この体系化を補助するために3つのスキル群をお伝えしました。

 

教えることはまず、「教える内容を明確化する」ことから始まるのです。

 

3.あなたの部署で必要とされるスキルは何か

 

前項でスキル群について話してきました。

 

さて、あなたの部署で必要とされるスキルは何でしょうか?

 

理想とする部下像を作り、その理想とする部下像を構成するスキル群を見つける作業です。

 

「教える」という作業にはこのゴールを明確にするという作業が必要だとお伝えしました。

 

ただ闇雲に教えても今日教えたことと昨日教えたことが相反することになったという事態を引き起こします。

 

鳥瞰的に見れば相反することではなくても俯瞰的に見ると相反することがあります。

 

例えば。

 

メモを書いてみせると「字が汚いからパソコンで書け」と言われたとします。

 

パソコンで文章を書くと今度は「心が伝わらないから直筆で」と言われました。

 

部下の立場からすると「?」です。

 

でも、上司の立場からすると、「自分宛のメモは、情報をきちんと伝えるためにもパソコンで早く打って渡せ」、「お客様宛の手紙は感情を込めて手書きしろ」ということなのです。

 

つまり、鳥の目で見れば全体が見渡せるので、最終的には○○になる、ということがわかります。

 

でも、アリの目で見ると何故矛盾することを言われるのだろう、と不安になります。

 

上司や先輩であるあなたは鳥の目です。

 

でも、部下や後輩はアリの目なのです。

 

不安を抱かせたら部下や後輩の教えられる側は本当に理解することができません。

 

そのためにも、どんな人材になって欲しいのかこれを明確にする必要があります。

 

そして、できれば、「いつまでに」こんな人材になってほしいと言えるようになって欲しいのです。

 

報告やメモは素早くパソコンで打てるようになって欲しい。

 

お客様に想いを届けるために丁寧に字が書けるようになって欲しい。

 

こう伝えることが重要なのです。

 

だからといって新卒で入社したばかりの社員に「社長になれ」というのはあまりにもゴールが遠すぎて理解できません。

 

逆に弊害も起きてしまいます。

 

何の努力もなく一足飛びになれそうな誤解を育んでしまう可能性があるのです。

 

なので、ゴールと言っても言われた方が理解できるレベルでのゴールを指し示すのです。

 

ああ、自分は近い将来、こんな感じになるのか。

 

そう実感できるように。

 

だからこそ、身近な上司や先輩は若い社員のゴールになりやすいのです。

 

意外と若い社員は職場のいろんな人を見ています。

 

飲み会で上司や先輩の愚痴を言うのもちゃんと観察しているからです。

 

そして、将来の自分と重ねるのです。

 

あんな風に自分はなるのか?と。

 

そこに「憧れ」があれば、その若手社員は会社を辞めません。

 

でもそこに「諦め」しかなければ、いずれその若手社員は辞めていくでしょう。

 

若手社員が見ているのは、自分のゴールなのです。

 

だけど、ゴールを示す際に気をつける点は、同じ人間は社内に2人いらないということです。

 

上司や先輩そっくりになってもダメなのです。

 

上司や先輩の良いところはもちろん身につける、それだけではなく、自分の良いところは伸ばす、悪いところは修正する、そうやった結果、どのようなゴールなのかが描けるように指示するのです。

 

これが意外と難しいのです。

 

でも、上司や先輩になったらやらなければなりません。

 

これが人材育成の最初のステップなのです。

 

それでは、今日はこの辺で。

www.ugrade-japan.com